田沢の森に眠る『宝』を、次へつなぐための10年

 

田口木材さんへ初めてうかがったのは、2年前の夏。

森林に囲まれたJR田沢湖駅。
樹々が発する光合成したての酸素がすこし濃いように感じられるほど、
夏の空気がしっとりとして涼やかでした。

駅の真裏に見える高い煙突。
創業84年になる田口木材株式会社の、木材を乾燥させるボイラーです。

現在の社長である田口知明さんは、四代目にあたられます。

じっちゃ(おじいさま)が植えてくれた森を活かすこと。
次の世代に残していくこと。

秋田杉の品質を最上に引き出すために『新月伐採』という方法を取り入れている一方、
あと10年で伐期を迎えるという、保有材積全国1位の秋田杉を
海外に向けて販売していくことにも力を尽くされています。

 

林業のいま、そして海の向こうへの挑戦

 


※ 隣接するJR田沢湖駅は、あきた新幹線「こまち」も停車。多くの観光客が利用する旅の起点。

 

—— おかげさまで、田口さんの森の木で作らせていただいている「新月伐採材のフォトフレーム」を
GOOD DESIGN EXPO 2011に出展することができました。一次審査を通過しただけですが。今回はArea Aid Projectという東北6県と茨城県への支援制度があって、出展費用等が免除だったんです。

あの加工技術はすごいですよ。
湊さんは生粋の職人ですね。

「無節」で「柾」となると、
丸太の中で非常にせまいエリアですけど
あの製品を見ると、
節のない柾(年輪が平行にあらわれている木目)じゃないと
ダメだとわかるんですよ。

 


※ 田口さんが「じっちゃ」から引き継いだ田口家代々の森の新月伐採杉材でつくっている casane tsumugu オリジナルのフォトフレーム。1点1点すべて湊さんの手作業で、釘を使わずにつくっています。

 

—— いま、秋田県の林業はどのような状況ですか?

林業は九州勢が強いんですよ。
後発な分だけ設備も新しいし、高品質で良いものを出してるんですよね。
こっちは「秋田杉」というブランドであぐらをかいてきたわけですよ。
「寒いから木の育ちが悪い分、木目がつまってて…」と。
そういうことではなくてね。

いま秋田県の製材生産量(㎡)は全国で5位。(※1位は宮崎県)
でも、森林保有面積(ha)と保有材積(㎥)は秋田県がダントツ1位なんですよ。
これを活用していかないとまずい。

 

—— それはまずいですね。

それで、単独でできる部分と、
力を集めないとできない部分があるので、数社で資本を出し合って、
高品質な乾燥材を安定供給できる大型製材工場の立ち上げを目指してます。
今年で10年くらい経ちますね。
2012年の夏には本格稼働の予定で、
県内はもとより県外や海外も視野に入れた営業活動を展開したいと思ってます。
中国や韓国も魅力的な市場ですね。

 

 

ただ、残念ながら中国も韓国も、木造の家ってあまりないんだよね。
レンガ積みの家やマンションなどが多くて。

とはいえ、たとえば、ベランダの床にウッドデッキとか、
内装材に木を使うとかはニーズがあるみたいなので、
そこらへんをうまく掘り当てられればいいなと。

秋田にはせっかく大陸側に向いた良い港があるので
そういう活動もしていかないとね。
そのための販売ルートも作っていきたいです。

地元の材料に関しては良いものを高く、小ロットでやっていく。
うちの会社もそういう分岐点に来てるんです。

 


※ 田沢湖生保内地域は、周囲をぐるりと山々に囲まれています。

 

—— 九州と秋田の違いはなんでしょうか?

秋田との大きな違いは、丸太の引き出し(搬出)のコストですね。
(九州は)比較的、行政が林道整備などにお金をかけてるんですよ。
そのコストが秋田と違うんですよ。

行政でやる林道のメインストリートの整備と、
民間でやるそこからの枝の道路整備を、うまくバランス取ってやらないと。

だから秋田県の材は高いのよ、製材会社が買った時点で既にね。
でも、山元(山の所有者)に落ちてるお金は安いんです。

丸太引取時に1万2千~1万3千円/㎥払ってるとすれば、
山元に落ちてるのは2,000~3,000円ですよ。
何にコストがかかってるかというと、伐採と搬出です。
一番だめなパターンですね。(苦笑)

 


※ 奥羽山脈に隣接する田沢湖地域の冬。そこは厳しい雪の世界。

 

—— なるほど。かなり厳しいですね。

山元に落ちないから、
山を持ってる人間は、木を育てるモチベーションが上がらないですよ。
ばかくさくて。
50年もがんばって2,500円ですよ。赤字です。

それでも、自分が植えたのではなくて、
じっちゃとかが植えてるから、
コストがかかってないので、切ることは切るんですよ。
でも、植え直さないですよ。

そこが非常に問題なんですよ。
うちら(製材会社)は同じ1万3千円でも、
その代わり5,000円くらい山主に落ちればいんだけれども。

最近はロシアの丸太が入らなくなって、
県内の合板製造でも秋田の材を使うようになって、
だいぶ丸太の消費量は増えたんですけど、それでも単価的には安いです。

 

 

(続きます)